彼と彼女と彼の事情

運転席のドアが、突然開いた。


中から出てきたのは――!!!


「遅かったな」


思わず、挿していた傘をズルリと滑らせるところだった。


「な、んで、ここに…?」

気が動転して、上手く口が回らない。 



「待ってたんだよ、奈緒のこと。忘れ物があって!」


悪戯っ子のような笑みを浮かべて、だんだんとこちらに近付いてくる。 



「何、忘れ物って?」
 


だんだんと、二人の距離が縮まる。


それに合わせ、心臓がドクン、ドクン……と音を立て、その場に立っているのがやっとだった。