暖簾をくぐると、中からは香ばしいいい匂いが漂ってきた。 


もう、それだけで食欲を刺激されてしまった。 


店内は、カウンター席が10個くらいのこじんまりとした店だった。


BGMは、リズムよく走る電車の音。


客層は、会社帰りと見られるサラリーマンばかりだった。 


カウンター越しに、大将と見られるおじさんとおばさんとが、黙々と仕事をこなしていた。 


「おやじさん、こんばんはー!」


「よぉ!いらっしゃい!
なんだ、今日は彼女連れか?」


と、一見、頑固親父風なおじさんがからかうように郁人に話し掛けた。


「あははは。違いますよ!」

二人は顔馴染みのようで、楽しそうに会話をしていた。