隼人は、目の前に置かれた『天狗舞』に手を伸ばし、グイッとひと飲みした。 「親父がさぁ、俺に頼み込んできたんだ。『会社を守ってくれ』って」 「会社?」 手酌で一呼吸置きながら言葉を繋いだ。 「あぁ」 個室ではあるものの、隣の部屋からは女性の笑い声が聞こえてくる。 ここだけが、ピーンと張り詰めた重苦しい空気が流れているようだった。