それから数日後―― 仕事を終え、帰り支度をしていると、私の携帯が鳴った。 忘れもしない、あの人を示す着信音。 いまだに電話識別機能を変更していなかったから、だいぶ前の流行り曲が流れ出しヒヤリとした。 でも、それ以上に心が震えた。 携帯のメモリを削除することのできなかったこの半年―― もしかしたら、連絡があるかもしれない……という一縷の望みから。 受話器を持つ手が、微かに震える。