3億円のキケンな恋

髪が濡れ服が濡れ…歩く足下さえも濡らし足取りを重くさせた。


今どこを歩いているのかさっぱりわからない。


小屋に向かっているのか帰路についているのか、それを知る手がかりも何もないのだ。





私は…完全に迷子になってしまった。



濡れたワンピースのスカートが脚にまとわり付いて気持ち悪い…。


拭っても拭っても顔にかかる雨水が鬱陶しい。


冷たい空気に冷たい雨がどんどん体温を奪っていく。



「寒い…っ」



イヤ…イヤ…!
このままずっと雨に濡れながら山の中で迷子だなんて…。



「助けて!強盗さぁん!!」


雨なのか涙なのかわからないくらい顔を濡らしながら私は叫んだ。



…強盗さん?

この期に及んで、私は強盗さんに助けを求めてる。


だけど、今私を助けてくれるとするならば強盗さんしかいないだろう。