バッグの中から1冊の通帳を取り出した。


アイザワ ユウ


私の名前が書かれた私の通帳。


お給料を振り込んでもらう為に作った新しい口座なんだけど、中を開いて見ても新規入金の1000円しか入ってない。


まさか落ちた就職先の銀行の通帳を作ってしまったなんてね。

なんか泣けちゃう。



とは言ったって、これから光熱費とか家賃とか生活費とか、みんなこの口座でお世話になるんだ。



「…あ、お母さん私の為に仕送りしてくれたって言ってたっけ」



最初の生活費だけは送ってあげるって言ってくれた。

さて、どのくらい振り込まれてるのかな?



通帳を作った後の振り込みだから、当然今の通帳には書かれていない。



「支度して、後から記帳しに行ってこよ」



まだ仕事先までの道しか慣れないこの町。

ちょっと散歩がてら、私は外をふらふらしてみる事にした。