静かな店内。


平日のゆったりした雰囲気に、深く重みのある声でその人物は言った。



「手を上げな」



ドキンと胸が高鳴った。


私に向けられた拳銃は、親指と人差し指を立てた手で作られたもの。


だけど、確かにその拳銃は私の心臓を捕らえていた。



「3億、戴きに来た」



「…ご…ご……っ」



拳銃を私に向けたその人物は、バンっと発砲した仕草を見せると私にフッと笑いかけた。



「お前という3億をな」



「強盗さん!!」



店内にまだお客さんがいる事も忘れ、私はそう叫んだ。



カウンターを回り込み、レジの前に立つ彼の側まで走った。



私の声に驚いて振り向いた他のお客さんの目も気にせず、私は思い切り目の前の彼に抱き付いてしまった。