3億円のキケンな恋

肺から喉から破れてしまうんじゃないかってくらいの勢いで走り続け、ようやくアパートの前まで来た。



もしアパートのまわりにパトカーが停まってたりしたら完全にアウトだと思ってた。


だけどパトカーどころか警察らしい人すらも居らず、アパートのまわりは朝と同じ静かな様子だった。


ホッとしたのも束の間。
まだ実際に強盗さんの顔を見るまでは安心出来ない。



――何やってんだ、お前。

――俺がケーサツに捕まる?バーカ。



…なんて言われるかな。

ううん、言われたっていい。

むしろ言われたい。



とにかく、あんな不安を煽る速報を見てしまって、不安で不安で仕方がないの。


急に心も身体も切なくなってきた。


強盗さん、早く私を抱きしめて安心させて!



ショルダーバッグからアパートのカギを取り出した私は、震える手でカギ穴に差し込んでカチャと鳴るまで回した。



この時私は、山奥からここまで乗ってきた南の車が駐車場から消えていた事に、さっぱり気が付かなかった。