3億円のキケンな恋

ビクビクとしながら、私は声がした方へゆっくりと振り向いた。




「…………て…店長さん!」



本屋さんの職員用出入り口からひょこりと顔を出しているのは、こうやって顔を合わすのはあの日面接以来2回目となる、当本屋さんの店長さんだった。


白髪まじりの優しそうな顔が特徴のおじさん?おじいさん?店長さん。



「やぁ、やっと風邪が治ったかね?
随分長いから心配したよ」




…そうだ。

私はこの数日間、誘拐されている事を知られないように強盗さんから仮病してる事にさせられたんだ。



いや、仮病って事にしたのは私のアドリブなんだけど。


仮病を使った事はウソには違いないから、ちょっぴりドキッとする。


だからって今まで誘拐されてましたとも言えないもんね…。



「…おはようございます!
これまで随分ご迷惑おかけしましたっ」



何にしても初めての出勤、上手くやらなきゃ。

…色々とね。