あの日、強盗さんと南は偽物の拳銃を持って銀行を強盗した。


だけど、強盗さんだけはこのナイフも持っていたのよね。


これだけは本物の凶器…て事で。



本物の凶器って意味なら南は持っていなかったようだけど、どうして強盗さんだけ持っていたのかなぁ。



私も一緒に毛布でくるませると、強盗さんはまたテーブルに置いたナイフを手にした。



「強盗さん…?」



「…俺な、これでいつでも死ぬ気だったんだ…」



「強盗さん!?」



同じ毛布の中で、私は背中側にいる強盗さんに振り返った。



「今もう死にゃしねぇよ」



その言葉を聞いて、ようやく安心する。



「昔からワルだったし、学歴もねぇからロクな仕事もつけなかった。
親父とは勘当させられるし、何かもうどうでも良くなってきてな…」




…私の知らない強盗さんの過去が…少しずつ話されていった。