毛布を壁の隅に畳んで置いたのは、朝洗濯して乾いた服を着た時。


だから、自分が使ってた毛布って事だね。


それを目指しているのだけど、両腕を縛られて両膝を縛られれば、必然的にお尻と足でズコズコとゆっくりの移動になる。


砂で汚れた床を、お尻を付けながら移動するのはちょっとイヤ。

だけど、毛布なしじゃ寒くて仕方ないもの!


必死に床を引きずりながら毛布のある所までたどり着くと、急に目の前にギラッと光るものが見えた。



「…妙な真似したら命が縮むって言っただろうが。
何をするつもりだ?」



私の目の前で光ったものは、南が向けたナイフの刃だった。


私の動きに気付いた南が、起きて来たんだ。



「…寒いから、毛布を借りようと思ったのよっ」



「人質の癖に贅沢な奴だ。
今度変な真似してみろ。次は訊く前に刺し殺すからな!」


そう言って南はまた同じ場所に戻った。



…ちょっと。

言うだけ言って結局毛布はかけてくれないの!?



「………ぐすっ」



あまりに悲しいというか悔しさに、涙を浮かべながら私は毛布を身体にかけようと、必死に格闘した。


そして身体にかけるのに、それから更に30分くらいを要した…。