3億円のキケンな恋

銀行のドアを出ると外はいつもと変わらない様子で、さっき入ってきた時と同じだった。


銀行内ではとてつもなく緊張に縛られていたってのに、外じゃそんな様子は微塵もなく平和そうだった。



「さっさと走れ!
モタモタするな!!」



グイグイと私を引っ張る強盗犯は、先に走るもう1人の強盗犯の後をついて走った。



「お願い…離して…っ」



喉から絞ってようやく出たか細い声で、私は目の前の強盗犯にダメ元で懇願した。



「お前には顔を見られたからなっ
しかも俺のマスクをいつまでも握り締めやがって!」



「え…?」



引っ張られながら自分の手を見てみると、しっかりと強盗犯のマスクを握っていた。


突き放された時にとっさに手に当たり、反動で握り締めてしまってたんだ。


さっき返せって私の手を掴んだのはこれだったんだわ!


もしかして握り締めてなかったら私、助かってたりした…?