電車が止まり、数少ない友人の一人が乗って来て、声をかけられる。


「はよっすー、メガネ。」


これが僕の名前だ。
いや、あだ名だ。
メガネをかけている以外に特徴が無いと、このあだ名になるんだろう。
地味メガネにならなくて良かった。


「はよっすー、コバ。」


小林だからコバ、そういうもの。


「隣の車両に乗らなくて良かったわ。」


「鹿沢でしょ、僕は電車がホームに入ってくるときに気付いて、すぐに乗り込む車両変えた。」


「電車の中混んでると逃げらんないからな。」


「何かされるわけじゃないんだけどね。」

「まーな。」


お互いに苦笑いする。

鹿沢は僕たちの地味グループじゃなくて、イケてるグループに所属している。
しかもリーダー的ところにいる。

僕らはそんな鹿沢の側にいると、小さなプライドが干からびるから、意識して避けてしまっている。

嫌なヤツじゃないと思う、あんまり話したことないけど。