花町。
夜が艶やかに賑わう町。
制限のない自由を許された唯一の町。
それ故に無法地帯でもあった。
生きるも死ぬもなんの制限もない。
此の花町で眠りから覚めぬと言う奇病が流行っていた。
魂を縛り付けると言う異形のものーーー。
人ではない存在。
鬼あるいは狐の類いか、
周りの目を引く美しい少女が見合わぬ着物をみにまとい
早足に大通りを歩いていた。
見も知らぬ相手に会うため。
その上、助けを乞おうという無謀な目的のため。
今しがた、可哀想なコギツネを神の元に送りその足で此の花町まで
やって来た。
巫女の中でも霊力に長け、鬼の封印にも携わった事があった。
その為に抜擢されたのだろう。
奇病の正体は明らかにアヤカシだから。