翔君の好きな人は、優樹奈ちゃん。

はっきり分かってるじゃん。



フラれて、またギクシャクなったら嫌だもん…。


せっかく、ここまで近くなったのに。



でも近くて……遠い。


心は遠い。



「俺、やっぱ向こうで寝るよ」


「うん……」



そう言って、翔君は静かに出て行った。


悲しい……。



っていうより……虚しい。


翔君、どうして……私にキスしたの?



私は、思い出なんかにできないよ……。



きっと、引きずってしまう。


新しい恋なんていらない。



翔君だけでいい。


たとえ、翔君が違う人と付き合っても……。



って……重いか。


やっぱり、翔君を忘れるためには、新しい恋が必要?



できるかな…?


違う人と、あんなに優しいキス……。



翔君とのキスの温もりを思い出しながら唇に触れてみる。


頬には、涙が伝っていた。



こうして、久しぶりにドキドキした夜は明けていった。