「それって、いつのことですか?」
「たしか・・四歳頃かな」
やっぱり、そうだ。
だから記憶の中に竜さんはいないんだ。
でも、会ったことあるのに忘れるなんて
・・失礼だよね。
「竜さん、ごめんなさい」
竜さんはいきなり謝られたことに驚いたのかテキパキと消毒していた手がとまってしまった。
「突然、どうしたの?」
「私、5歳から前の記憶が無いんです。その・・・両親が交通事故で亡くなっちゃってその時の衝撃で・・」
「・・・」
竜さんは何も言わないけど、瞳の中の何かが悲しそうに揺れ動いたのが見えた。
なんで・・・
そんなに悲しそうな瞳を、するんだろうか?



