「……今さら、何なの?」




僕がそんな声で目覚めると、杏は僕の胸の中にはいなくて、




怒りながら、誰かと話していた。




「……私、もう好きな人がいるの。それにね、あの頃も幸せじゃなかった。好きじゃなかったんでしょ?私のこと。」




……杏の声がひどく悲しいもので、僕は少し怖くなった。




「……もう二度と電話してこないで。」




杏はそう言うと、大きくため息をついた。




……どうしよ?




話しかけにいくべきかな?




……でも、やっぱり怖い。




僕はただ布団の中で、丸まっていることしかできなかった。