私の子猫くん


「……でも、変わらなくてもいいの。コウは近くにいてくれるだけで幸せだから。」






「そんなわけないだろ。コウくんと一緒に暮らしていくっていうことには、たくさんの壁があるんだぞ?結婚もできない、帽子なしじゃ外も出歩けない。何より、人間の知識に疎い。それなのに、一緒にいるだけで幸せだなんて。」





「……そんなことない。」






「……はぁ。3か月ぐらい経てば、コウくんも変わってるかなと思ったけれど、杏が変わらないとダメみたいだね。」






「私は……今のままでいい。」






「僕は杏を救いたいんだ。戻っておいで、僕のところに。」







私たちの会話は平行線だった。






ただ、亮の語気は確実に強くなっていて、私への思いが本当のものなのかと勘違いしてしまいそうになるくらいだった。






「……戻らない。」






「……ふぅ。そう。」






亮はそう言うと、少しの間沈黙を保った。