「……ねぇ、杏。」




「ん?」





「コウくんを拾ってきたときから、すごく女っぽい顔するようになった。自分で気づいてる?」





「えっ?そ、そうかな?」







私は自分の顔に手をあててみる。






「……私が知ってる杏は、そんな顔するような子じゃなかった。だから、コウくんが杏の元にやってきてくれて、本当によかったと思ったの。最初はそりゃ驚いたけどね。」






風に乗って、淡くコーヒーの匂いが伝わってくる。






「……だから、お互いに傷つかないようにする必要はないと思うの。お互いに気を使いあえる関係もないとは言えないけれど、お互いの胸の中を見せあって、話しあえる関係のほうが恋人らしいと思う。きっと、どんな杏を見せてもコウくんは杏のことを嫌いにならないはずだし、杏もどんなコウくんを見ても嫌いになんかならないでしょ?」







「……うん。」







「だったら、ちゃんと話しないと。杏のほうが人間の先輩なんだから。」






……美樹はそう言って笑った。