「杏。僕が守ってあげるから。杏を悲しませたり、苦しませたりする全部から、僕が杏を守るから。もう、僕の目の前以外で泣いたりしないでね。」 言ってから考えると、まだ杏のことをよく知らない僕が言うにはあまりにも頼りない言葉だったかもしれない。 それでも、僕は杏を心から愛おしいと思った。 この人の隣でずっと笑っていたいと思った。 「……うん。」 そう言った杏を僕は抱きしめた。 杏の匂いが僕の鼻をくすぐる。