「栞なんです、四つ葉のクローバーの押し花の!」


「まだ届いてないですね。届きましたら連絡いたしますので。こちらに連絡先とお名前お願いします」


……ついてない。本当についてない。
図書館の貸し出しカウンターの前でうなだれながら、ペンをとる。


女子大付属の図書館からわざわざ取り寄せてもらった本に、大切な栞を挟んだまま返却してしまった。

「五日くらい前のだったら、すぐ見つかります、よね?」

「どうでしょう? ……うちに連絡が来ていないので、まだ」


栞をなくしたのに気付いたのは、返却した次の日だった。
でも、母との約束で、放課後に外出は禁止だし、電話の使用も先月から禁止されているから、五日間やきもきしながら土曜日を待ち続けた。


「お願いしますっ、見つかったらすぐに連絡下さい」

連絡先と名前を書いた紙を渡し、深く頭を下げた。

「わかりました。見つかるといいですね」

図書館の職員は他人事のように、というか、他人事なんだけど、かなりそっけなく、紙を受け取る。

「ほんと、お願いしますね」


「はい、連絡しますから。次の方どうぞ」


……本当に、大丈夫かな。
不安になりながらも図書館を後にした。