あれから5日後の夕方、俺は俺の人生を読破した。そのころにはもう涙は枯れていた。

これまで自分の人生を何の才能もなく、誰からも愛されず、認められず、薄っぺらい人生を歩んできたと勝手に思ってきた。ようするに運がないと思っていた。

しかし、そうではなかった。

まず感じたことは客観的に自分をみた時、本気で死ぬほど努力をしたことがほとんどなかった。

才能うんぬんの前に成功する理由がないのだ。認められるわけもなければ尊敬されることもあるはずがない。

そして、やりたいと思ったことをすぐに実行していなかったことに気が付いた。。いろんなことに興味はたくさん持った。ただ、それで終わりだ。

「もう少し自分の可能性を信じてとりあえずやってみたら?。」と、本の中の自分に何回問いかけたことか。

今まで自分の人生の時間を無駄使いして生きてきたことがよくわかった。

ただ、そんな俺を生まれてから今この瞬間までずっと変わらず愛し続けてくれている母親の存在にも気付くことが出来た。

母には今までたくさんの小言を言われ、うっとうしく感じだしてからは自分から話をすることはなくなっていた。家を出た後も定期的に電話もかかってきていたのだが、わざと留守電にすることが多かった。

母の何気ない言葉の中には、愛があり優しさ、心配が込められていた。

小さい頃は大好きだった。大きくなるにつれ、一緒にいることが恥ずかしくなり、だんだんと距離をとっていった。中学時代は社会に反抗し、大人に逆らうことに美学を感じだしていた。しかし弱い自分は母親に対してしか強くいられなかった。

そんな最低な息子のことをずっと本気で思ってくれていたことに、今回この本を読んで初めて分かった。

「…ありがとう」

俺は残りの2日もこの本をひたすら読んだ。

そして1週間がたったとき彼女はまた姿を現した。