「あなたが大学4年の時。どうしても入りたかった会社エックス社、面接受けて一次も通らなかったでしょ?」

「…確かに一次面接で落ちたさ。ただそれは俺の実力がなかったからだろ!?運命とか選択じゃないはずだ!」

「言いにくいんですが面接を落ちたのは実力なんかじゃないです。覚えてますか?あなたはその面接の帰りに電車に乗ったんです。その時、座席は全然空いてなかったの。そこであなたは唯一空いていたシルバーシートに迷った挙げ句、座ったんです。その後、妊婦さんやお年寄りがたくさんあなたの横に立っていたのに席を譲らなかったの覚えてますか?」

「…あぁ、あの時は本当に疲れてて。隣のじいさんに怒鳴られてすぐに席を立ったからよく覚えてるよ。」

「実はその時のおじいさんがエックス社の会長だったんですよ。」

「えっ?!」

俺は目が点になった。

「あなたは本当は面接では二次試験に進む予定だったんです。だけど、会長があなたの履歴書みて不採用にしちゃったんです。自業自得かもしれないですが…。シルバーシートに座らなければ、席を譲っていれば…って。二回もチャンスがあったんですよ?」

彼女は哀れむ目で俺を見た。

「まだまだあるんだけど全部聞きたいですか?」

「…もういい。」

俺はそれしか言えなかった。もう人生なんてどうでもいいとさえ思いはじめた。

「気を落とさないで。そんなあなたにチャンスをあげようって天使の私が来たんですから!」

彼女は誇らしげに俺に語り始めた。