母の葬儀も終わり四日が過ぎた。俺は会社にも出社し、いつもの生活に戻っていった。

あの日、母に最期に嘘を言ったことは全く後悔していない。最後にこの情けない生活ぶりなんか知ってしまったら母自身が後悔し悲しむと思ったからだ。安心して天国に行ってもらえたと思う。

本当に最後に会えてよかった。

ただ、心残りなのは母と会った日以来、マナが姿を現してくれないことだ。お礼だけはどうしても言いたいのだが。

もう会えないのだろうか…。

「先輩!お久しぶりです!」

あゆみとも久々にあった気がする。やはり可愛い。

「おはよう。この前は悪かったね。」

「じゃあ、今夜埋め合わせしてくれますか?」

「OK!6時に集合で」

「やった。」






「……マナちゃん、最後にあきらと会わせてくれて本当ありがとう。」

母は深々とお辞儀した。

「あきらが病室に入ってきた時の顏をみて、今の生活がとても苦労していることがすぐにわかりました。だけどあの子は私に心配させまいと、たくさんの優しい嘘をついてくれました。それが嬉しかった。」

母は涙した。

「でも顔を見ただけでよく嘘ついたってわかりましたね?」

マナがなぜだかわからないという顔で母を見た。

「…母親ですもの。」

母はニッコリと笑った。

「なるほどです。」

マナは納得した。

マナは手に持っていた望遠鏡を母に渡した。

「この望遠鏡は少しだけ未来が見えるんです。これであきらさんを見てください。きっと素敵な未来が映っていますから。」

「まぁ…。」母は望遠鏡をのぞき、笑顔で涙した。