「…母さん…。久しぶり!」

俺は精一杯の笑顔を作った。

「…あきら。」

母さんは驚いた様子もなく、俺をしっかりと見ていた。

「久しぶりね。」

母さんは弱弱しい声でつぶやいた。

「…久しぶり。」

母さんに近づき、手を握った。

「あきら。元気にしてた?」

この質問だけは聞かれたくなかった。どうするべきか…。

今、母さんに本当のことを言ったとする。母さんは絶対に心配し、この世に未練が残るだろう。俺が何を言おうと母さんは死ぬのだ。ならばここは嘘をついてでも、今俺は本当に幸せだ、充実している、最高だと言ってあげるべきじゃないだろうか。 

本当にこれでいいのだろうか。最後に嘘をついていいのだろうか…。

「あきら?」

「母さん、俺今さ………、」

「すっごく充実してる!!仕事なんてもうすぐ俺主任のポスト任されるんだよ!それに、俺母さんに紹介したい人がいるんだ!結婚しようと思ってる。だから早く退院してくれよな!」

「あきら…。そうなの…。本当に良かった。」

母さんはワンワンと泣いた。

その後も母さんを安心させようと嘘をつき、嘘をつき、嘘をついた…。

その2日後、母さんは亡くなった。