「お疲れ様でしたー」

やっと今日の仕事が終った。今月に入ってやたら残業が多い。

時計を見ると11時を回っていた。最近は9時から始まるドラマなんて見たことがない。

しかし、この大不況のなか、いつ潰れてもおかしくなさそうな工場での勤務でさえ真面目にしないといつクビになるかわからない。残業も文句なんて言えない。

「ただいま!なんてね。誰もいないんだけどさ」

家についたあとすぐに俺は帰りに買ったコンビニの弁当を電子レンジにほりこんだ。そしてビールを飲みながらテレビをつけたとき、口に含んだビールが吹き出した。

「なんであいつが!!?」

テレビにうつっているのは昔、一ヶ月ほどでフラれた元カノだった。

彼女はインタビューをうけていて旦那らしき人と子供と三人で楽しそうに新しく出来た大型テーマパークの感想を答えていた。

「なんだよこれ…」

彼女は俺が三年かけて猛アタックのすえやっと付き合えた憧れの存在だった。が、フラれた原因もわからず自然消滅した。

「海外赴任になったの」これが彼女の最後の言葉だった。

「…ちきしょう…ちきしょう!」

涙がこぼれていた。

彼女にとって俺は別れを告げることさえしない存在だったのか。

「俺ってほんとにどうしようもないな…」

俺はそばにあった中学の卒アルを手にし、クラス写真をみて号泣した。

30前にもなって彼女もいない、仕事も安定しない、貯金もない。「俺だけかな…こんなしょーもない人生って」

自暴自棄に突入する寸前、背後から可愛い声がした。

「まぁ、元気だしてください。」

声のするほうをみると背中に羽の生えた小さな少女がたっていた。

「誰だ!?」

「初めまして!私、天使です。」