両親のお葬式の日に、母方の祖父母や親戚は来なかった。
父の祖父母はもう亡くなっている。
私たちの身の振り方を僅かな親戚が話し合っていた。
「真侑と愛那には遺産も何もないのか?」
「真侑は大学進学を諦めて、働いてもらうとしても、愛那をどうするかだな」
親戚達は誰も、私たちを引き取りたがらなかった。

葬儀が終わった後、ようやく義務教育中の愛那は、叔母である父の妹夫婦が引き取ることに決まった。
叔母の夫はともかく、叔母は優しい。
「真侑ちゃん、ごめんね。二人とも一緒に預かってあげられなくて…」
「叔父さんを説得するの大変だったでしょ?遺産も何もないあたしたちを引き取りたがる人なんていないし」
敬子叔母さんは優しいけど、叔父さんはあまり子供好きじゃない。
二人ともお世話になるなんてできない。
「愛那のことだけ、お願いします。あたしは大丈夫だから」
私は頭を下げて、叔母さんにお願いした。
愛那を引き取ってくれる。それだけでいい。それだけでもいい。
「私は1人で暮らしていきます。大学には行かないで働く。就職はできるか分からないけど、できなくてもバイトたくさんして、愛那の生活費くらいは渡せるように頑張るから」
これが私の運命なんだ。私はそう自分に言い聞かせた。

パパとママが逝ってしまってから、愛那はずっと泣いていた。
そんな愛那を守るために、私は泣いちゃいけなかった。
「嫌!愛那、叔母ちゃんのとこ行かない。真侑お姉ちゃんと一緒にいる!」
私も一緒にいたいよ。二人きりの姉妹だもん。
「愛那。この家はもうあたしたちの家じゃなくなるの。もうここでは暮らしていけないの」
「愛那たちの家、なくなっちゃうの!?パパとママだけじゃなくて、お家もなくなっちゃうの!?」
泣きじゃくる愛那を抱きしめて言う。
「お姉ちゃんは愛那のそばにいるから。毎日会いに行くから。敬子叔母ちゃんの言うことを聞いて良い子にしていてね」