――ブォーン・・・――
 静かな車内。
 山笠先生は、意外と運転が上手かった。
「ここか?」
 先生が、バックミラーに向かって話しかける。
「・・・ああ、はい」
 後部席に座る私。
 隣には、ユラがちょこんと座っている。
〈ユラ、どうすればいいのよっ〉
 小声で話しかけた。
『そうね~・・・まず、抱いちゃえ!』
「はぁっ!?無理っ・・・」
 思わず、声に出してしまった。
「・・・大丈夫か?」
 山笠先生が、困ったように笑う。
『もう、度胸も色気もないのね!』
 あっ・・・!
「先セー~~~♥」
 まただ、また・・・取りつかれたぁ!
 恥ずかしい言葉、連発されるぅ~!
「先生、超カッコイ~!えへへっ♥」
 車が、私の家の前で止まった。
 同時に、私・・・いや、ユラが先生に抱き着く。
「おわっ!なんだお前、酔ってる・・・わけないな」
「だぁって~、カッコいいんだもんっ」
「離せって。教師と生徒の恋愛は、基本ダメだぞ」
 スー・・・っと、ユラが抜けていく。
「ほらほら、さっさと帰るんだ」
 疲れた顔つきの先生が私の背中を押して、家に入れる。
「じゃあな」
 先生が乗った車が、だんだん遠くなり・・・
『あ~あ、行っちゃった。智樹、意外と手強いわね~』
「・・・って、なんであんたが私の家にいるのよっ」
『一人じゃ寂しいでしょ?あんたも』
 まあ、そうかも。
 いっか、たまには。
『なんか食べた~い』
「幽霊って、おなか空くの?」
『空かないけど、舌が乾くのっ!想像で食べる!』
「・・・何を?」
『カレー、美味いんだ』
 ユラが瞳を閉じると、テーブルの上にカレーが・・・
『ハッ!!』
 ポンッ、と音を立て、現れた。
「じゃあ、私もご飯~♪」
『美味しそう!』
 私もご飯を食べ始めた。
「ていうか、おなかってふくれるの」
『ん~・・・ふくれないよ?』
「何も感じないの?」
『味はわかる。あと、悲しみとか、喜び、楽しさ』
「寒いとか暑いとかは?」
『それはない。風邪とか、ひかないもの』
「へ~」
『でも、人それぞれ?霊それぞれ?それぞれ違うみたい』
 そうなのか。