「編入試験はどうでした、兄さま」

「そこそこ、だな」

「まぁ、編入は確実に出来ますから。安心してくださいまし」

「……金か?」

「家柄もですわ」

「金持ちって怖い」

「兄さまも今や金持ちの一人ですわ」

広間に並んだ机の一角。
横に佳乃、前に父親斜め前に義母。
明人は気まずい夕食にも馴れてきたな、と思いながら味噌汁を啜る。
それからご飯茶碗を左手に、右手に橋を持ち、置かれた夕食に手を付けていく。

「佳乃はあれの中等部か?」

「はい!少しだけ家のいざこざもありますが、面白い学園ですのよ」

家同士のいざこざが存在する時点で普通ではなさそうである。
話は変わるが、普通の県立高校に通っていた明人からすれば、あね学園は異常な広さだった。
多分、私立でもあそこまでは広くないだろうと思えるような広さだと感じた明人は佳乃にさっきの話をぶった斬ってそれを伝える。

「敷地面積広かったな…無駄に」

すると佳乃はこう返してきた。

「たくさん部活が有りますもの、狭いくらいですわ」

「アレで狭いなら、普通の学校どうなるんだろうな……」

カルチャーショック、と小さく明人は口のなかで呟いた。
佳乃は明人の言葉を聞いてキョトンとしている。