「兄さま、お座りくださいまし」
「……よし、の?」
「はい、佳乃です。兄さま」
ちょこんと上座の近くに座った少女が言う。
明人はよく覚えていた。
九年見ていないが、間違いはないはずだ。
三歳違いの、血が半分繋がった妹だ。
「兄さま、どうか怒らないでください」
「怒るなって、言われても……俺この人嫌いだし『息子』じゃないのに『息子』って言われたら嫌だろ?」
明人は頭をかきながら、顔をしかめて言う。
佳乃は少しだけ、気落ちしたように肩を落とした。
「兄さま……兄さまは私の兄さまですよね?」
「まぁ、そりゃ…血は半分しか繋がってないけど、佳乃は妹だな」
その言葉に、佳乃の表情は明るくなる。
まるで好きな人に、告白された人間のように、明るく。
「でしたら、父さまは嫌いで構いませんから。私の兄さまとして戻ってきてはくれませんか?」
「………えー」
否定の言葉を紡ごうとした明人だったが、既に何故か涙目の佳乃に明人は動揺を隠せない。
いくら九年間離れたとはいえ、離れるまでは大分可愛がっていたのだ。
記憶は大分磨耗していても、それは忘れ難い。
「……よし、の?」
「はい、佳乃です。兄さま」
ちょこんと上座の近くに座った少女が言う。
明人はよく覚えていた。
九年見ていないが、間違いはないはずだ。
三歳違いの、血が半分繋がった妹だ。
「兄さま、どうか怒らないでください」
「怒るなって、言われても……俺この人嫌いだし『息子』じゃないのに『息子』って言われたら嫌だろ?」
明人は頭をかきながら、顔をしかめて言う。
佳乃は少しだけ、気落ちしたように肩を落とした。
「兄さま……兄さまは私の兄さまですよね?」
「まぁ、そりゃ…血は半分しか繋がってないけど、佳乃は妹だな」
その言葉に、佳乃の表情は明るくなる。
まるで好きな人に、告白された人間のように、明るく。
「でしたら、父さまは嫌いで構いませんから。私の兄さまとして戻ってきてはくれませんか?」
「………えー」
否定の言葉を紡ごうとした明人だったが、既に何故か涙目の佳乃に明人は動揺を隠せない。
いくら九年間離れたとはいえ、離れるまでは大分可愛がっていたのだ。
記憶は大分磨耗していても、それは忘れ難い。
