あの時を思い出す。
…なぜか、今無性に消したい思いが、よみがえってきた。
…この状況で、考えるのは止めよう。
また、同じ過ちを繰り返すから。
……でも、
それでも気持ちは言うことをきかない。
「ねえ、何ボーっとしてんの?」
夕焼けを窓越しに眺めている私に声をかけてきた藤田。
やっと我に返った。
「夕焼け、見てんの?」
この時の藤田の声は、どこか寂しいような気がした。
「…うん、なんか綺麗だなって」
「…マジで綺麗だなぁ…」
藤田は椅子ら立ち上がって窓の方へ近付いていく。
私も後から追いたい気持ちになったけど、今はそれを押し殺した。
その代わり、動く口。
「……藤田、この夕焼け、前にも同じのあったんだよ」
「…覚えてるよ」
私に背中を向けて答えた藤田の顔は、どんな表情をしていただろう。
私の口は、また動く。
「なんか、懐かしいね…。こないだあったことなのに……」
そして私は、思わぬ言葉を口にしたんだ。ずっと、言い出せなかった言葉。
「……あのさ、藤田。誰にも喋らないから、教えてほしいの…。…藤田の彼女って…誰?」
自分で言ったくせに、すごく驚いた。
今日の私…なんか変だよ…。
このままここにいたら、きっと…
「…ごめん…それは…言えない」
「…そ、そうだよね…。ごめん。……じゃあ、教えてくれなくてもいい。だから……私と、キスして…ください」
そういったのは、他の誰でもない。
惨めな自分だった…。
何言ってんだろ…私…。
……でも、困っちゃうよね、止まらないんだ…。