[帰っていいよ。
ごめんね、怖がらせて]



眉をさげて悲しげに笑うのは
本当に東條さん?



[携帯はあとで弁償する。
‥‥俺なにやってんだろーね]



壁にもたれかかって
そのまま、すとんと座った東條さんは

自分の髪をくしゃりと手で
掴んでそう言った。



[鍵、いらないです]



[は‥‥?]



[東條さんが泣きそうだから
もう少しここにいます。]



[‥‥ははっなんだよそれ、
俺、本当に泣いちゃうじゃん]



そう言って、
彼はまた笑った。