二つ目は、八坂新地よりやや西、暗がり通りにある肉割烹。ここは店主がとにかく偏屈なので、伏せ字での紹介も控える。

 ……が、祇園でそこを知らないのはもぐりであるから、夜の祇園で、

「肉料理で、暗がり通りにある店」

 と尋ねたら、十中八九場所を教えてもらえる。偏屈な親父のいるその店を。

 さて、ここからは私の想い出話になる。

 初めてその店を訪れたのは、独立して小さなホストクラブを立ち上げた二十歳の頃。

「一流のホストはな、いいもんを食べんとアカンで」

 と、当時のお客に連れられていったのが最初だったと記憶している。

 メニューは一応あるのだが、基本的にお任せでないと受け付けないという雰囲気の店主がカウンターの中で肉切り包丁を振るっていた。