秋空の下、徐々に色付き始めた花見小路。一力亭の石塀から覗く樹木の囁きは、その装いの変化により時節の移り変わりを報せてくれる。

 狭い舗道を東に向かえば四条石段下の八坂さん。祇園祭のメインプレイスである彼の地は、同時に有数の観光地でもある。

 敷地内を歩いてみれば、大小様々な社や祠。それらを抜けた先には円山公園。

 今は老木のため、枝の多くを切られてしまった垂れ桜。しかし、かつての壮麗さを憶えている人間にとっては、今も彼こそが円山公園のシンボルであり、彼こそが円山公園なのである。

 枝を切られ、寂しくなった肢体を晒しながらも、かつての威厳を思い起こさせてくれる立ち姿は京都を愛する人間にとり安心感をさえ与えてくれる。