美味しい京都案内



 様々な想い出がその刹那頭を駆け巡った。同伴出勤の前に何度利用したことか、はたまた何人の恋人とそこでの時間を楽しんだか、そして、そのいずれの人間達もが(自分も含めて)、料理に、サービスに、雰囲気に癒され、和まされ、元気を貰えたか……。

 デザートを平らげ、コーヒーを飲み終えたら、客は筆者親子だけになり、少しの時間、シェフやスタッフと言葉を交わした。

 皆、一様に残念な表情であった。閉店には様々な理由があったらしいが、経営が順調な中での閉店はさぞかし不本意であろう。

 しかし、経営者たる会社の決定だからと、力なく笑顔を浮かべるスタッフの目は少し潤んでいた。

 ただ筆者に言えることがあるとするならば、

「旨い料理と楽しい時間をありがとう」

 それのみである、グスン……。