その日の朝の目覚めは最悪だった。




寝ようと思っても
なかなか寝付けなくて。


目を閉じたら
瞼の奥に樹里の泣き顔が浮かんでくる。



どんなに掻き消そうとしても

“嫌い”


あの言葉が頭の中で響いてて。



とにかく
眠れなかった。






だけど
そんな時でも
無情な朝は来る。



結局僕は、毎朝の仕事に取り掛かった。





「…はぁ~ぁ。」


ぶっちゃけ、憂鬱だ。








―――――…




「…補聴器は?」

「……付けたよー…。」


その言葉を合図に
僕はマフラーを口元まで上げて
いつも通り歩き出す。



樹里は僕の少し後ろを歩いていた。