樹里は耳の定期検査で
月に一度、必ず病院へ行かなければならない。
隣町の、大きな大きな大学病院。
大抵、学校まで樹里のおばさんが迎えに来て
そのまま早退する。
「やだなぁー。」
「病院?」
踏む度にサクサク鳴る雪に
俯き加減の樹里が唇を尖らせる。
「検査、痛い、から嫌いなのー。」
「…まぁ、わかるけどさぁ。」
樹里が下ばかり見てるから僕も自然と俯いてしまう。
「聞こえなくなったら嫌だろ?」
「…うんー。」
「じゃあ、我慢。な?」
「……うぬぅー。」
何だ、その返事。
その後も駄々をこねる樹里に
笑いをこぼして
いつの間にか見慣れた校舎が目の前にあった。
……今日は村上の家にでも遊びに行こうっと。