「悪い、佐伯。俺ら用事あるんだ。」

「え?」



佐伯エリナの返事が返ってくる前に
樹里の手を引いて歩き出した僕。





息が詰まりそうだ。



鼻につくあの香水も
甘ったるいあの喋り方も全て

僕を不愉快にさせる。



「ちょ、ちょっとぉ!尚斗先輩!」



慌てて追い掛けて来る佐伯エリナに
足を止めて振り返った僕は


「もう、俺のクラスに来んな。」

と低く言い放った。





冷たい。

そう言われれば
冷たい言い方だったかもしれない。


だけど、僕だってそんな温厚な性格じゃない。





人を平気で傷付けるようなあんな女
傷付こうが僕の知ったこっちゃないんだ。





「じゃ。」


その一言を告げて
僕は樹里の手を引いたまま廊下を歩き出す。



呆気に取られた
佐伯エリナをそこに残して。