「ゆいちゃん、帰ろー!」





そう言って私に笑顔を向けるのは、近所に住む幼なじみで一緒に塾に通う村田美和。





「帰るとか言って、先生待つんでしょ?」




「えへへー!」






そう。




美和も先生が好き。




私と同じ人が好き。





だから私が先生を好きなことは、美和には言えない。




美和には私が好きになる前に相談されてたし、美和を応援したい気持ちもあるから。







私たちはいつも塾が終わると、塾の前で先生を待つ。




先生が出てきたら、美和は原付きにまたがる先生の前に立つ。



私は先生の後ろの席に横向きに座る。




そのまま塾の前で1時間くらい話す。




今はもうそれが当たり前のようになってきた。




塾が終わって外に出た頃にはもう10時を過ぎてるから、先生を好きな子も門限で仕方なくすぐに帰る。




家が近い私たちは少しラッキー…かな。





本当だったら嬉しいはずなんだけど、やっぱり美和と先生が仲良く話してるのを見るのは辛い。