そして、今私は塾の前。



手にはさっきコンビニで買ったお菓子と飲み物。





「今日は美和もいない。チャンスだよ、ゆい!」



「そうだよぉ、ゆいちゃん!差し入れ買ってぇ、メイク直してぇ、スカートもう1コ折ってぇ、気合い入れてぇ!」



「ただ渡すだけで終わっちゃだめだよ?先生と二人きりで話すチャンスなんだから、塾が終わりそうな時間に行くこと。わかった?」





学校の帰り道、渚と絵里奈に気合いを詰め込まれた。



そうやって自分のことみたいに考えてくれる二人を見てると、いい友達持ったなぁなんてしみじみ感じちゃう。





「よし!」



…ピンポーン




私は小さい声で気合いを入れて、塾のインターホンを鳴らした。



「はいよ。」




出てきてくれたのは、先生だった。



私は顔が火照るのを感じながら、必死に平然を装った。





「こんばんは!はい、先生これ差し入れだよ!」



「はは、ありがとー。はい、充電器。」



「ん。ありがと!じゃあ、またね!」




うわー!ばかばか!またね、なんて言ったら終わっちゃうじゃん!あーあー。




「…あ、もう終わっからさ、ちょっと待ってろよ。」




ドアが閉まる直前で、先生からまさかの言葉が出た。



私は慌ててドアが閉まるのを阻止して、嬉しくて飛び跳ねそうになるのを抑えながら、



「うん!」



と、返事をした。