結局、6時間目の体育は具合が悪いって言ってサボった。




みんなが走ってるのを教室の窓から見ながら、


黒髪の渚と金髪の絵里奈、二人並んでるとやっぱり目立つなぁ。二人とも美人だからなぁ。



なんて考えてた。




「早く終わらないかな。」



独り言を呟いて机に顔を伏せると、その瞬間にポケットの携帯が鳴りだした。




「ん…電話?知らない番号だ。だれだぁ?」



私は少し躊躇しながら電話に出た。




「…もしもし?」



「…あ。出た。」



「………え?」





よく電話だと人の声って変わるって言うけど、私はこの声が誰だかすぐにわかった。





「…せ、んせい?」



「おう。ごめん、急に。塾の生徒名簿見て掛けたんだけど…」



「あ…だ、大丈夫!…何か、用とか…?」




私は言いながら、「いや、お前の声が聞きたくなって…」みたいな言葉を期待したけど、先生に限ってそれはないと思い直して、爆発しそうな心臓を落ち着かせようとした。




「そうそう。お前、昨日塾に携帯の充電器忘れてっただろ。土日は塾開かないから、困るだろうと思って。」



「あ!そうだぁ!ないなって思ってた。でもなんで私のってわかったの?」



「塾で携帯充電してんのなんか、椎名しかいないよ。」



「あはは!隠してたのにバレてたかぁ。塾長には内緒ね!」



「はいはい。」




案外、普通に話せてる自分にびっくりした。



心臓は相変わらずバクバクしてたけど、それでも先生と電話で話せてることが嬉しくて嬉しくて、涙が出そうになった。




私は、学校が終わったら塾に取りに行く約束して電話を切った。




渚と絵里奈が体育から戻ってくるまで、私は一人教室で先生の電話番号を見つめながらずっとニヤけてた。




一番に帰ってきた渚と絵里奈はそんな私を見て笑い転げてたけど、電話のことを話すと、



「まじ?一歩リードじゃん!」



って喜んでくれた。