「椎名、その問題解いたら今日は終わりにしていいよ。」




「はーい、要先生。」








私、椎名ゆい。


高校2年生。





今年の春から個別指導の塾に通い始めた。




あまり大きい塾ではないけど、家から近くて通いやすい。




最初は面倒な塾だったけど、塾長も先生もみんないい人で勉強も分かりやすくて、


私はこの塾がすごく好きになった。





それとさっきまで数学を教えてくれてた、綾川要先生。




私の大好きな人。






要は「よう」じゃなくて「かなめ」って読む。




要先生は私が塾に通い始めて、しばらく経ってから来るようになった。




最初に見たときは、猫っぽい人だと思った。




ちょっと茶色い癖のある髪に、黒縁メガネをかけて眠そうに塾に来る。


塾の友達はみんな「要先生、かっこいい」って言ってた。





私は、何となく気になって気付けば目で追ってた。