すると先生が歩のアゴに指を添えて、少しだけクイッと上を向かせる。


歩もさすがに状況が読めるようになってきた。


人目を気にしながらではあったが、軽くて短めのキスを何度も何度も交わす。



今回のキスは激しいものではなく、始まりから終わりまで軽いままだった。


「……じゃあ、あたし行くね、」


歩は明らかに慌てた様子で車を降りた。


恥ずかしいのだろう。


また顔が真っ赤になっていた。


「うん、じゃあまた連絡する」


先生は笑う。


歩は先生の車が見えなくなるまで、見つめてから店内に入る。


店長はさすがに帰ったようだ。


歩は店内にある鏡に写し出された自分の顔を見つめる。


耳まで真っ赤に染まっている。



「店長いなくてよかった………」



歩はほっとした様子で呟いた。