アザレア

そのよそよそしさと言ったら。

思わずやめろ、と怒鳴りそうになる衝動をぐっと堪え、

「気にすんな。今更だろ、俺とメイの間柄だ」

少し癖のある、メイの柔らかな髪に触れる。
撫で付けるように、……宥(なだ)めるように。


『今更だろ』

そう――今更、なんだ。
脳内を駆け巡るのは、今しがた口をついて出た自分の軽薄な台詞。


『俺とメイの間柄だ』

果たして俺らの間に何がある? 
俺の知る答えはただ二つ、意見する事も出来なかった幼少の頃と、この一年。
つまりは主従関係のみ。


――じゃあ、解放しようとしている今、何が残る?

差し迫る“その時”に下される審判。
それを決める権利は俺にじゃない、メイにある。