職員室の前に着くときには

少し息が切れていた。



先生に連れられて

職員室内に足を入れた。




「これをクラスの奴らに
 配っておいて欲しいんだけど。」


私は俯きながら

その紙を受け取った。





「それと放課後に
 手伝って欲しいことがあるから
 教官室に来てくれ。」



「はい…。」



先生にしては

覇気の無い言い方だった。



でもこの場から

立ち去りたい私は

一礼をして職員室を出た。



そして走り出そうとしたとき。

後ろから手首を摑まれた。


振り返ると先生が

私の手首を摑んでいた。




「なぁ…柏木。
 何かしたか、俺…?」


小さい声で先生が言った。






私は勢いよく首を横に振った。


「じゃあ、何で…。」







手首を摑む先生の手に

力が入った。




「わ、私…っ!」


「黒澤、何してるの。」



私の後ろから声がした。


先生の目線が私ではなく、

私を通り越して後ろに移った。


振り返ると美鈴が立っていた。




「千架に何してるの。」


美鈴が言うと先生の手が離れた。



「いや、なんでもない。
 気にするな…。」

そう言って職員室に戻っていった。