「……」



一言も喋らないまま俯く。


さっき肩を押された衝動でひざまついてスカートに砂が付いた。



「あんた…ムカつくのよ…」



絞り出す声が、一気に心臓の動きを早まらせる。



「秋山くんと付き合ってるのに永瀬くんにも媚売って」



あ…。もしかして。



「ちっ…違います!確かに楓くんとは…」



楓くんとは…。



――お前の事なんか嫌いなんだよ



言いかけた唇が閉じあの言葉がグサリと突き刺さり、次が出て来ない。



「梓くんに媚は売ってません…」


「"梓くん"って…。やっぱり媚売ってるんじゃない!」