涼弥が女だということは、家族、事務所の社長、理事長、マネージャーが知っている。
でも、誰も涼弥を涼とは呼ばないし、誰も女扱いをしない。
涼は存在しなかった。
涼弥という男だったと、思い込むようにしていた。
それは、事務所の社長でもある、涼の父親が決めたことだった。
涼が初めてモデルの仕事をしたのは、1歳のときだった。
その頃から、どんな服を着ても似合う涼に、周りは期待をしていた。
そして、年を重ねるにつれ涼は、“可愛い”というより“かっこいい”が似合うことに、父親が気がづいた。
そして…
「涼はいい素材をもっている。
きっと、メンズモデルなら上を目指せる。
いや、もっと高みに上がれるかもしれない。
俺の夢を叶えられる!!
決めた!今日から涼は男だ!
いいか?涼。お前は、男として生きろ。
女じゃない。お前は男だ。
涼という名前も捨てろ。
今日からは、そうだな…
“涼弥”と名乗れ!分かったか!?」
と言い出したのだ。
涼が6歳のときだった。
ちょうど、幼稚園にも行ってなかったし、小学校から今までも父親の知り合いの私立に行った。
だから、バレることは無かった。
知ってる人間も、男だと思い込むようにした。
涼自身も毎日毎日、父親に言われ続けた。
そして、男なんだと思うようになった。
かっこよくいなきゃダメなんだ。
強くなきゃダメなんだ。
男でなければならなんだ。
女であってはいけないのだと…
