「“涼弥”!!起きなさい。朝よ。」

母親の声で目が覚める。
身体を起こしゆっくり背筋を伸ばす。

(今日もまた始まる…)
「…おはよう。涼。」

窓の外を見る涼弥。
いや、今の姿は涼の方か…
優しく何処か寂しそうに微笑んでいた。



「涼弥!!いつまで寝てるの!?」

母親が大声を出して部屋に入ってきた。

「…もう、起きてる」

さっきと違い低い声が冷たく響く。
涼から涼弥に変わった瞬間だ。
スッと涼弥は立ち上がった。
180近くある身長に、整った顔立ち、そして抜群のスタイル。
誰がどうみてもイケメンな男の子。



でも、“涼弥”は本名を“涼”といい。
正真正銘の女の子。
誰も“涼”とは呼ばないけど…
そう家族の中でさえ“涼”は、存在しない。