「そうだな。それでは、写真集について、色々決めようか。」
「晃さん。俺は、写真集がどんくらいの期間で、どんなもので、いつ発売でもええ。
ただ、撮影についてだけは、俺の自由に撮らしてもらうで。それだけは、譲られへん。」
「なっ!?馬鹿を言うな!
撮影は、スタジオでそれぞれの季節に合わせて行くつもりだ!」
「はあ?」
柊は、社長を馬鹿にしたように言った。
「晃さん…そんなん、いつもの雑誌の涼弥やん。全くおもろないわ。
ファンが見たことのない姿が見れるんが、写真集やろ。いつもの涼弥やったら意味ないねん。
謎に包まれた、涼弥の“私生活”、涼弥の“魅力”を写さな。
それこそ、誰も見たことのない涼弥をな!」
柊の意見は、もっともな意見だった。
社長も言葉を失った。
長い沈黙の後、柊が来てから初めて、涼弥が口を開いた。
「…撮れるのか?」
「え?」
「誰も見たことのない俺を…
(俺ですら見たことのないのに)
お前は、本当に撮れるのか?」
「ああ!」
「…自信たっぷりだな。」
「当たり前や!俺ぐらいやと思うで。
涼弥を最大限に引き出せるんわ!」
ニヤッと笑う柊。
その顔は、強がりではなく、本当に自信に満ちた顔だった。
「分かった。撮れるものなら撮ってみろよ。お前の自由にな。」
「涼弥!?」
社長は、驚いた。自分が決める前に涼弥が先に答えたのは、初めてだったからだ。
「先に言っとくけど、俺は、手強いから」
「クスクス。俺、勝負事大好きや♪ええで、挑むところや藤涼弥!」
柊が右手を出した。
“パァーン”
涼弥がその手を叩いた。
社長をそっちのけで、2人はお互いに何かを感じ、そして、いつになく興奮しているようだった。
もちろん、柊が帰ったあと社長にかなり怒られたが、涼弥には、何も届いていなかった。
