事務所に着くと、すぐに社長室へと向かった。
“コンコン”
「涼弥です。」
「入れ」
その言葉のあと、大きく深呼吸をしてから涼弥は、中に入った。
社長室は、黒と白で統一されていて、四方ガラス張りのオシャレな部屋だ。
涼弥は、社長の前に立った。
「お前に写真集の依頼がきた。」
「写真集…ですか?」
「ああ。」
写真集の話しが来たのは、初めてではないし、いつも社長が勝手に断っていた。
写真集といえば、セミヌードなども要求されるからだ。
それに、いつもはいちいち涼弥には、言わない。
なのに、今回は社長自ら言ってきた。
何か嫌な予感がした。
「引き受けることにした。」
(…やっぱり。)
涼弥の嫌な予感は当たった。
「何故ですか?」
「…。」
「有名なカメラマンなんですか?」
そう、続けて聞いた。
「いや、無名だ。しかも…お前より年下だ。」
「えっ!!?」
さすがの涼弥も驚いた。
涼弥を撮りたいと言ってきた、有名カメラマンは数知れず。
でも、社長が許可したのは、世界でも活躍していた明さんだけだった。
有名だろうが、社長が気に入らなければ、他の所属モデルたちでも、撮ることを許さなかった。
無名なんて論外だ。
そんな社長が、無名でさらに涼弥より年下の人間に、涼弥の写真集を許可するなんて…
考えられなかった。
